予防と健康管理レポート

 

 

キーワード「ストレス」 「ストレッサー」

 

1、はじめに

今回のレポートを書くにあたって、2本のビデオ「うつ病」と「アスベスト」について見た。そのうち、「うつ病」のビデオの内容と、選んだ任意の2つのキーワードを元に論文を読んで、要約、考察を述べる。

 

2、論文の概要

@ ストレス社会と疲労    橋本 信也

1)ストレスの歴史

ストレスという言葉を初めて論文に記載したのはHans Selye(1935)であることは良く知られているが、それより以前19世紀の終わりごろ、Claude Bernard(1913-1878)は、生体は種々の外的な刺激に対し、内部環境を一定に保つ内部環境の恒常性という概念を唱えた。20世紀に肺って、Walter B.Cannon(1971-1945)は、生体に不快な侵襲性の刺激が加わると、交感神経―副腎髄質系が作動してカテコールアミンが分泌され、それによって外界に対して顕著な反応を示すことができることを示して、これを緊急反応系と呼んだ。

 Selyeは動物実験により、生体にとって有害な刺激が加わると非特異的な反応、すなわち@副腎の肥大、A胸腺およびリンパ節の萎縮、B胃・十二指腸潰瘍が起こることを見出し、これをストレスの三大兆候を呼び、こうした反応を凡適応性症候群あるいは一般適症候群と定義した。

 その後、ストレスとは生体に加わった侵襲によるゆがみを生じる反応を意味し、ストレスを引き起こす要因をストレッサーと呼んだ。ストレッサーとしては、温熱、冷感、外傷などの物理的なもの、薬物などの化学的なもの、微生物などの生物的なものなどきわめて多岐にわたる。

もちろん、Selyeによってストレスが概念化される以前の大昔から人類は、過酷な自然、木が、猛獣、他民族との闘争などのストレッサーを受けてきたが、人間は文明の発達とともにこれを対処してきた。しかし、文明が発達し、人類の社会構造が複雑化するにつれて新たなストレッサーとして誕生したのが、社会的、心理的ストレッサーである。こうした新しいストレッサーが、人間を悩ませ、不安にさせ、多彩な身体症状を引き起こすのである。

 

2)一般社会におけるストレスの現状

 平成10年の国民生活基礎調査によると、約40%〜50%の成人(2564歳)が、日常生活においてストレスを感じているという。年齢別では、男女とも3544歳の年齢層が最も多く、各年齢層とも女性のほうが、男性よりもストレスを余計に感じているという。ストレスの内訳は、男性は各年齢層とも「仕事に関すること」が1位を占めるが、女性は年齢層によって第1位が異なり2534歳では「仕事」、3544歳では「子供の教育」、4564歳になると「自分の健康・病気」と変わっていく。

 仕事に関するストレスが、男性では全年齢層で、女性でも若年者層で多いということは、職業性ストレスが働く社会人の健康状態に大きな影響を与えているということで1つの社会問題として捉えられている。平成14年労働者健康状況調査によると、自分の仕事や職業上の生活に関して「強い不安、悩み、ストレスがある」とする労働者は61.5%にも及んでいる。その内容については、「人間関係」35.1%、「仕事が多い」32.3%、「仕事内容」30.4%、「会社の将来」29.1%、「雇用の安定性」17.7%であった。こうした結果は、当時の現金給与総額の減少、所定外労働時間の増加、常用雇用の減少など、経済化の不景気を物語るものであり、加えて中高年の男性の自殺者の増加にも関連し、大きな社会問題となっている。

 

3)ストレス関連疾患の分類と治療

ストレスによって起こる病態をストレス関連疾患と定義した場合、3郡に分類すると臨床上便利であると考える。

第1郡は器質的疾患が存在し、これがストレスにより、影響を受ける場合で、いわゆる心身症と呼ばれる病態である。気管支喘息、高血圧、胃十二指腸潰瘍など、すでによく知られている疾患である。

第2郡はストレス、特に社会心理的因子が明らかに引き金となって、発症したと思われる身体症状、精神症状を呈する病態である。特にこの状態は身体症状として激しいだるさ、精神症状としての抑うつ、睡眠障害など呈することが多い。代表的なものとして、身体表現性障害(転換性障害、疼痛性障害など)、不安障害(外傷後ストレス障害PTSD、急性ストレス障害など)、適応障害(ストレス関連性障害)、などの他、慢性疲労症候群のうち心理的ストレスが発症要因となっている病型はここに入る。

第3郡は第2郡の亜型というべきかもしれないが、明らかな心理的因子が特定できない場合である。ストレスは患者個人によってその受け止め方が異なり、時間をかけた問診によっても見いだせなかったり、患者本人の意識下にあったり、あるいは病前性格とからむ場合である。特に抑うつ、倦怠感、不眠、集中力低下などを訴える気分変調障害ではストレッサーはわかりにくいことが多く、患者の要因も考えないといけない。

いずれにしてもストレス関連疾患をこのように分類することは治療上も重要である。すなわち心身症と非心身症にわけ、心身症であれば器質的病変に対する基礎治療がまず行われるし、器質的病変は存在しないが心理的要因が明らかな場合はストレスに対する対応を考えねばならない。

 多彩な臨床症状に対して、身体表現性障害には、カウンセリングによる心理療法、生活指導、不安障害に抗うつ剤が主な治療法ということであるが、じっさいには症例によってこの3つの対処法を上手に組み分けることが大切である。

 

4)考察

現代社会はストレス社会といわれている。それは社会の中で生じるものであり、現代人は激しく変化する社会構造の中で、大小の差はあれ、さまざまな質のストレスに曝されている。ストレスによって生じる健康障害はストレス関連疾患と呼ばれ、その数も年々増えている。ストレス関連疾患は、多くの職業性ストレスを含むが、他に家庭、学校、地域社会などでもさまざまな心理社会的ストレッサーが要因となっている。

さらには日本人は伝統的に集団思考型国民であるといわれている。すなわち日本人の精神構造は、集団との調和が尊重されている。ストレスを強く感じる人は、あまりにも組織や集団との一体感に意義を感じ、それが職場に対する忠誠、義務、服従などでがんじがらめとなりストレスとなっているのかもしれない。

私はまだ働いたことが無く、家庭ももっていないので、わからない部分は多くあるが、試験前、特に大学受験が近づくにつれよく頭が痛くなっていた。この頭痛はストレスによるものなのか調べてみたところ、ストレス関連疾患の代表として、偏頭痛、緊張型頭痛というものがあった。まだ明らかには割れていないが、ストレス時における身体変化として、側頭動脈の血流の増加があると書かれていた。私の頭痛は頭の側頭部位に痛みを感じるので、これは偏頭痛であり、ストレス関連疾患を患っていると思った。

 

 

 

A ストレスと生活習慣病  下光 輝一

1)はじめに

 現代はストレスの時代と言われている。急速な技術革新、バブル経済の崩壊に伴う終身雇用制ならびに年功序列制の崩壊とリストラの拡大、産業構造の空洞化による経済不況の到来、経済のグローバル化などの近年のわが国の社会のドラマティックな変化に伴い、人々のストレスに関連する健康障害が顕在化している。

 5年ごとに行われている労働省の「労働者健康状況調査」によると、仕事や職業生活で「強い不安、悩み、ストレス」(職場ストレス)を感じるものの割合が増加しており、1982年の50.6%から1997年には62.8%に上昇し、章句場で働く人々の5人に3人はストレスを感じるというような状況になってきている。また、仕事での疲れを翌日に持ち越すを答えた人達の割合も、同様に1982年の42.2%から、1997年には58.4%と増加している。健全な労働は、労働後に十分な休息が取れ、労働日の翌日には疲労を持ち越さないことが必須条件と考えられる(労働力の再生産)が、わが国では60%近い労働者が、翌日にも齟齬との疲れを持ち越しているのである。また、地域社会においても、不登校、いじめ、ひきこもりなど学校や家庭でのストレスにかかわる問題に事欠かない。

 さらに近年、自殺死亡率が急増し、1998年の自殺死亡数が、前年の統計と比較して35%増の31734人と、ついに3万人を突破し、交通事故死者の3倍以上となった。特に男性の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)は36.1人(女性は14.6人)と、過去最高となった。自殺率は、その後も3年間高い水準を維持しており、瞬間的なものではない事が推察される。警察庁のまとめでは、40歳〜64歳の中高年男性が12669人と、自殺者の4割を占めている。このような自殺者急増の背景には、事業の行き詰まりやリストラ解雇など、経済不調の影響が考えられ、特に中高年の男性がそのストレスにさらされていることがうかがわれ、ストレス対策は喫緊の課題となりつつある。

 この文献では、心理社会的ストレスの健康への影響について、特に生活習慣病との関連について論じることとする。

 

2)ストレスとは

 社会における心理社会的ストレスを適切に評価し、対策を進めるためにまずストレスの概念の共通の理解が必要である。ストレスという言葉は、一般に、ストレス刺激となるもの(ストレッサー)と、そのストレス刺激をうける生体におけるゆがみ(ストレス反応)とに分けられる。したがって、ストレスという言葉を使用する時にまずそれがストレス刺激となるものをさしているのか、あるいはストレス反応のほうを指しているのか、あるいはその全部をストレスというのか、明らかにしておく必要がある。

 J.P.Henryは、ストレス刺激の強さと反応の起こり方の関係に、パフォーマンスという観点から考察を加えた。通常、刺激が強くなるにしたがってパフォーマンスは上昇する。すなわち、刺激が少ない時には人は「リラックス」した状態にあり、その結果パフォーマンスもまだ低い状態にある。刺激が徐々に増強するにつれて、パフォーマンス上昇し、刺激がかなり強くなると、人にとって「挑戦」という状況になる。この時人のパフォーマンスは最大になる。しかし人の能力には限界があり、刺激がさらに強化されると、疲労困憊という状態となり、そして最後には破綻という状態になってしまう。いわゆる過労死はその状態をいうと考えられるという仮説をたて、ストレス研究を行った。

 

3)生活習慣病に対するストレスの影響

 このようなストレスも出る理論は提唱されてからまだ日が浅いが、最近ようやく、ストレスが健康に与える影響についての疫学的研究の結果が出始めている。Belkicらは、デマンド・コントロールモデルにより調べられた職業性ストレスと虚血性心疾患有病率や発病率についても断面研究、症例対象研究、コホート研究のレビューを行い、男性を対象とした23の研究のうち19の研究において、また女性では7つの研究のうち5つにおいて、高ストレイン郡に虚血性心疾患の有病率や発症率が高かったとしている。このレビューでは血圧についてもレビューしており、高ストレイン郡では仕事中の血圧が高いとしている。また、努力報酬不均衡状態は、虚血性心疾患発症と関連すること、また、高脂血症、高血圧、血漿フィブリノーゲンなどの危険因子などともに関連することが、コホート研究や断面研究などで認められている。これらの研究のな化には、ス俺巣が、生理的な変化ばかりではなく、また飲酒、喫煙、食事、身体行動などの生活習慣の変化に介して、生活習慣病の発症に影響を与えることを報告しているものである。

 

4)考察

 ストレスについて研究され始めたのは最近になってからであり、これまで実験室で内 での動物実験研究が主体であったため、まだ不明なことは多く、報告についても確証がもてないものも少なくない。言わばダイナミックなストレスモデルである。今後は、介入研究が積極的に行われ、ストレス要因と健康障害の関係がより一層明らかになるものと思われる。それとともにストレス関連健康障害を予防するために、ストレス対策の方策を明らかにしていかなければならないであろう。